FEATURE № 04 — THE NUTRITION ISSUE
Excess,
and its silence.
Plate IX — 19:11 p.m.
NUTRITION — PROTEIN EXCESS

もう、
吸収されない。

「タンパク質の取りすぎは腎臓に悪い」は、健康成人ではエビデンス薄。Devries MC が J Nutr 2018 で示したのは、高タンパク食で腎機能が悪化するという主張のエビデンスは弱い、ということだった。本当の取りすぎとは、効果がゼロになるという意味である。1.6g/kgを超えた分は、エネルギー化されるか、尿素として排泄される。今号は、過剰の沈黙について。

Sufficiency is the most underrated virtue.
— Editorial, AMPL Journal
「足る、ということは、もっとも過小評価された徳である」
白いスプーンと、こぼれた粉。1.6を超えた瞬間の沈黙。Plate II
01
THE DEVRIES META-ANALYSIS
Devries 2018、28のRCT
J Nutr 2018。健康成人の高タンパク食で、腎機能のマーカーは動かなかった。

Devries MC らのメタ解析(J Nutr 2018)は、健康成人を対象に高タンパク食(1.5g/kg/日超)と通常食を比較した28のランダム化比較試験を統合した。eGFR、血清クレアチニン、尿アルブミン、いずれのマーカーにも有意差は出なかった。

つまり、慢性腎臓病(CKD)の既往がない健康成人にとって、高タンパク食が腎機能を悪化させるという主張のエビデンスは、現時点では弱い。「腎臓を壊すから取りすぎ注意」という助言は、CKD 患者の文脈で生まれたものであって、健康成人にそのまま適用される根拠は乏しい。

CLASSIC — On Sufficiencyc. 400 BC
老子『道徳経』第33章· Laozi, Tao Te Ching, Ch. 33
知足者富。

老子が「足るを知る者は富む」と書いたのは紀元前の中国である。それから2,400年、Morton 2018と Devries 2018が示したのは、栄養学的にも同じだった。タンパク質は1.6 g/kgで身体は満ちる。それを超えても、身体は悪く言わない、ただ、利用しないだけ。

02
WHAT EXCESS REALLY MEANS
取りすぎの、本当の意味
「もう吸収されない」が、最も正確な言い方になる。

Morton RW のメタ解析(BJSM 2018)が示した、筋合成の頂点は1.6g/kg/日。それを超えた分は、筋肉に取り込まれない。代わりに、エネルギー源として代謝されるか、尿素サイクルを通って腎臓から排泄される。腎臓が「壊れる」のではなく、淡々と仕事をしているだけである。

だから、2.0g/kgを摂取することの「害」は、健康成人では、ほぼゼロに近い。むしろ、その分のお金がもったいないという、コスパの問題のほうが大きい。プロテインパウダーは安くない。1.6で身体が満ちるなら、それ以上は、文字通り「お金を尿に変えている」状態である。

A simple ritual / 日々の作法
<1.6
筋合成に貢献
=1.6
頂点(プラトー突入)
>1.6
エネルギー化または排泄
腎機能
健康成人では変動なし
VIGNETTE — ジムのプロテインバー

ジムのカウンターで、知人がプロテインバーを2本買って、シェイクと一緒に飲み込む。彼は身長170センチ、体重70km。1日のプロテイン摂取は、たぶん、2.5g/kg。それで筋肉は同じ速度でしか増えない、と説明したら、「お前、夢を壊すなよ」と笑われた。

— 編集部
皿のうえの肉と豆。足りる量と、足りすぎる量。Plates VI–VII
03
THE EXCEPTIONS
例外の人たち
CKD・腎結石既往・特殊代謝疾患では、別の話。

Devries の救出は、健康成人の話である。慢性腎臓病(CKD)ステージ三以上、シスチン尿症などの腎結石形成リスクが高い疾患、特殊な代謝疾患を持つ人では、高タンパク食は腎機能の進行を加速させたり、結石を増やしたりする可能性がある。これらの人々では、医師の管理下でタンパク質量を調整する必要がある。

また、健康成人でも、極端な高タンパク食(3g/kg超)の長期摂取に関する安全性データは、まだ限定的である。1.6〜2.2g/kgの範囲が、現時点で最もエビデンスが厚い。それより上の領域は、未知ではないが、未知に近い場所である。

Less, but better.
— Dieter Rams, Ten Principles for Good Design
「より少なく、しかしより良く」──ディーター・ラムス
04
DESIGNING THE INTAKE
摂取の、設計
1.6で身体は満ちる。それ以上は、コスパで判断する。

プロテイン摂取の設計は、Morton と Devries を組み合わせると、シンプルになる。健康成人で、レジスタンス・トレーニングをするなら、1日1.6g/kgを上限として置く。それを3〜4食に分けて、1食20〜40g。シェイクは食事で足りない場合の補完。それで充分。

減量期や高齢者では、もう少し上(1.8〜2.2g/kg)が推奨されることもあるが、それも上限はある。3g/kgを超えた領域は、エビデンスが薄い場所であり、コスパも悪い。「もっと飲めばもっと筋肉が増える」という直感は、ある点までは正しく、ある点で完全に止まる。

05
THE NUMBERS
過剰の統計
数字で読む、足ることの徳。
1.6g/kg
筋合成の頂点
0
健康成人での腎機能変化
28
Devries メタ解析の試験数
>3.0g/kg
未知に近い領域
1.8-2.2g/kg
減量期・高齢者の上限目安
2018
Devries / Morton 出版年
ベンチの上の空のシェイカー。1.6で、もう、終わりにしていい。Plate VIII
CODA — 編集後記

老子が「足るを知る者は富む」と書いたのは紀元前。Devries と Morton が2018年に示したのは、栄養学的にも同じだった。1.6で身体は満ちる。それ以上は、お金を尿に変えているだけ。今夜のシェイクを、ひと匙減らす。たぶん、それで充分である。

— 編集部 / おかもん先生