スマホの青い光が眠りを壊す。そう言われて、カットメガネを買った人は多い。しかし17のRCTを束ねたコクランレビューは、その効果に有意差を見いだせなかった。真犯人は波長ではなく、明るさと時刻だった。
メガネでは防げない理由
Singh 2023 Cochrane Database Syst Rev は、ブルーライトカットレンズと通常レンズを比較した17のRCT、619名を解析した。結果、睡眠の質、眼精疲労、黄斑の健康、いずれにも統計学的な有意差はなかった。エビデンスの確実性は「低い」と評価されている。メガネの青色光遮断率は10〜25%程度。その程度では、網膜に届く光量の総和を変える力が足りない。
100ルクスの閾値
Zeitzer 2000 J Physiol は、光の強度とメラトニン抑制の関係を精密に測定した。半最大抑制に達する照度は106ルクス。200ルクスで抑制は飽和する。普通のリビングは150〜300ルクス。つまり日常の室内照明は、すでにメラトニンを最大限に抑え込む領域にある。青い光だけを削っても、総照度が変わらなければ効果は限定的だ。
子どもの網膜は大人の2倍敏感
Higuchi 2014 JCEM は、同一の光条件下で就学前児童と成人のメラトニン抑制率を比較した。結果、子どもは88.2%、大人は46.3%。ほぼ2倍の差があった。水晶体の透明度が高い子どもの眼は、短波長光をより多く通す。同じリビングの灯りでも、子どもの体内時計への影響は成人より大きい。就寝前1時間の減光は、子どもにこそ意味がある。
タブレットと入眠潜時
Chang 2015 PNAS は、就寝前4時間のiPad使用が睡眠に与える影響を測定した。メラトニン分泌は55%抑制され、DLMO(dim light melatonin onset)は1.5時間遅延した。入眠潜時は25.6分に延びた。紙の本を読んだ群は15.8分。約10分の差がある。光源との距離も重要だ。タブレットは顔から30cmで使う。天井灯より網膜への到達光量が大きい。