論文を批判的に読み、生活へ翻訳できるようになるまでを5段階に分けた。 自分が今いる段階を選び、そこから順に進む。 各段階のページは一通り読むと20〜75分で完走できる。
論文は、答えではない。
判定の道具だ。
「論文に出ている」と聞くと、確定情報のように響く。けれど査読論文は「答え」ではなく「ある条件下のデータ」にすぎない。
このページは、ビジネスアスリートが「論文を眺める側」から「自分で読む側」へ移るための地図。
タイトルと著者から研究の輪郭を読む。
タイトルは要約ではなく設計図。30秒で研究の骨格を取り出せる。
タイトル一行を PICO で分解し、著者と所属、利益相反を確認する。
タイトル一行から、研究の輪郭を読む。
タイトルは要約ではなく、設計図である。PICO で分解すると、研究の骨格が30秒で見える。
タイトルを改めて読む。
「タンパクサプリは効くか」を答える論文と思い込む。 実際は「健常成人で、筋トレ併用時に、どの程度筋肉が増えるか」しか答えていない。 タイトルにない条件は答えていない、と読む。
systematic review と meta-analysis と meta-regression の3層が並んでいる時点で、 ただの集計ではなく用量反応も検討していると分かる。 「タンパクを増やすほど効果が増えるか、それとも頭打ちになるか」まで問いに入っている。
下記のタイトルをノートに写し、P / I / C / O / S それぞれに該当する語句を自分の言葉で書き出してみる。 上のグリッドで示した答えは、分解してから確認する。 ここで「C が明示されていない」ことに気づければ、タイトル読解の第一関門は通過だ。
"A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults"
「McMaster 大学の Phillips 教授が書いたなら信頼できる。 権威のある研究室だから結論も正しいはずだ。」
「Phillips 研究室は方法論の蓄積がある。だが COI を確認し、 データが他の独立した研究グループで再現されているかを見てから判断する。 権威は出発点であって、結論ではない。」

誰が書いたか、なぜ書けたか。
論文は無記名のテキストではない。誰が、どこで、何の資金で書いたか。これが判定の前提になる。
Stuart M. Phillips は1990年代からタンパク質代謝を研究してきた第一人者。 McMaster大学でのキャリアは30年を超え、当該領域の方法論の精度は世界的に高く評価される。
共著の Brad Schoenfeld、Eric Helms、Alan Aragon らは、 筋肉量増加の研究とその実務応用で独自の業績を持つ。 研究グループの多様性は、解釈の偏りを内部から牽制する機能を持つ。
Phillips は Canada Research Chairs、Canadian Institutes for Health Research、NSERC から支援を受けている。 同時に、US National Dairy Council から研究助成、旅費、講演料を受け取った旨を論文内で開示している。
Schoenfeld が Dymatize Nutrition(サプリメント企業)の諮問委員だった事実は、 後の Erratum(訂正)で追記された。
Funding. SMP thanks the Canada Research Chairs, Canadian Institutes for Health Research, and the Natural Science and Engineering Research Council of Canada for their support.
Competing interests. SMP has received grant support, travel expenses, and honoraria for presentations from the US National Dairy Council.
「タンパク産業から資金を受けているから信用できない」と全否定するのも、 「権威があるから正しい」と全肯定するのも、どちらも判定ではない。 COI を読む目的は、結果に偏りが入りうる方向を予測することだ。 タンパク産業寄りの著者が「タンパク補給には1.6 g/kg/day で十分」と上限を設けて正直に書いたなら、 そのデータへの信頼は上がる材料になる。
同じ結果でも、Phillips 研究室から出た論文と、無名の研究室から出た論文では警戒度を変える。 著者の方法論的な蓄積が、論文の信頼性のベースラインになる。

ここまでで掴めたこと。
- PICO で見ると Population: 健常成人 / Intervention: タンパク補給 / Outcome: 筋量・筋力。
- Phillips はタンパク代謝の世界的権威、US National Dairy Council の COI を開示。
- 「権威 = 正しい」でも「産業資金 = 信用できない」でもない。判定の前提として読む。
